今回は児童精神科医の佐々木正美さんの著書「子どもの心はどう育つのか」という本の紹介です。
乳児期から老年期までの心の発達について学べ、子育ての参考になるのはもちろん自分の心の成熟段階を知ることもできる本でした。
- 子どもから大人まで、心の発達段階について知りたい。
- お子さんの子育ての参考にしたい。
- 本が気になっている。
という方に読んでいただけると嬉しいです。
「子どもの心はどう育つのか」の概要
書籍名 | 子どもの心はどう育つのか |
著者名 | 佐々木正美 |
出版社 | ポプラ社 |
出版日 | 2019年10月8日 |
ページ数 | 155ページ |
目次 | 第1部 発達と成長 ー乳児期から思春期・青年期までー 第2部 成熟と円熟 ー成年期から老年期へー |
児童精神科医の佐々木正美さんは「子どもの心はどう育つのか」の他に「子どもへのまなざし」「子どもの心の育てかた」「子育てのきほん」など多数の著書があります。
「子どもの心はどう育つのか」は精神分析学者のエリック・H・エリクソンの「ライフサイクル論」を元に人の心の発達と成熟をわかりやすく解説したものです。
エリクソンの「発達・成熟段階」(発達課題)は以下のように分けられています。
- 乳児期(誕生~2歳)
- 幼児期(2歳~4歳)
- 児童期(4歳~7歳)
- 学童期(7歳~12歳)
- 青年期 前期(13歳~17歳)後期(18歳~22歳)
- 成人前期(23歳~35歳)
- 成人中期(36歳~55歳)
- 成人後期(56歳~)
この本には、それぞれの時期にどのような心理的発達や社会的危機があるのか、また、重要な人間関係の範囲などについても書かれています。
スポンサーリンク
「子どもの心はどう育つのか」のポイント
本は1~8までの発達段階の順に解説されています。
乳児期から青年期
①乳児期(~2歳)は「基本的信頼」の時期。
この時期に望んだことを望んだとおりしてもらえた子は、人を信じる力も自分を信じる力も豊かに身に着けられるそうです。
乳児院での「深夜の授乳をすべきかすべきでないか」を検証するためにされた実験が印象的でした。
②幼児期(2~4歳)は「自律性」の時期。
衝動や感情を自制したり社会のルールを身に着けるこの時期。
トイレトレーニングなどのさまざまなしつけをする中で、何をすべきかを伝えることは親がするけれど、いつからするかは子どもに任せた方が良いということでした。
③児童期(4~7歳)は「自発性」の時期。
好奇心や探求心が開発される重要な成熟のテーマとなる時期だそうです。
この時期の子どもがする行動と体験、それができる環境を与えて寄りそう事の重要性について書かれていました。
④学童期(7~12歳)は「勤勉性」の時期。
「勤勉」とは社会的に期待されている活動を自発的かつ習慣的に営むこととされていて、「勤勉さ」を身に着けるためには仲間の存在が必要だそうです。
友達に教えたり、友達から学んだりすることが次の発達段階にも大きな影響を与えると書かれており、不登校についても触れられています。
⑤青年期(思春期)(13~22歳)は「アイデンティティ」の時期。
自分は何者かを自覚、洞察し、自分の本質と他人との違いを知ります。
「価値観」を共有できる友人が、自分の内面や人格を移す鏡の役割を果たしてくれるため、自分に良い評価をくれる友人の存在がとても重要だそうです。
成人期から老年期
⑥成人期(23~35歳)は「親密(和)性」の時期。
いつから成人期やその後の発達段階に入るかは自分が決める事で、ここからは年齢による区分は無いそうです。
この時期の発達課題は自己を確立し他者との親密な関係を築く「親密性」を養う事です。
結婚相手や親友との親密な人間関係、また日常生活における人間関係でも、相手にのまれずに自分を表現できる「自己の確立」が重要であると丁寧に解説されています。
⑦壮年期(36~55歳)は「世代性」の時期。
前の世代から引き継いだものを次の世代へ受け渡すなど、次の世代に関心を深める時期です。
子育て世代に向けては、自分の子どもだけが幸せであればよいというのではなく、子供が作る社会に関心を示す育児が良いと書かれていました。
⑧老年期(56歳~)「統合性」の時期。
自分の生涯にかけがえのない意味があったことを見出します。
「自分の人生はあるべきだった」と思えることで、自分の最期を安らかに受け入れられると書かれていました。
「子どもの心はどう育つのか」の感想
最初は我が子の子育てについて想いをはせながら読み進めていました。
もう通り過ぎてしまった乳児期については、まるで答え合わせをするように。
娘と息子が今まさに迎えている幼児期、児童期についてはしっかりと。
そしてこれから迎える学童期、思春期については、自然と昔の自分と重ねていました。
この本では繰り返し「友達」の重要性について語られますが、その中でも、優越感と劣等感の存在が仲間との関係に悪影響を及ぼすことについての話が印象的でした。
劣等感がある人は同時に優越感も感じていて、それは健全な友人関係を築く妨げになるそうです。
劣等感がない人は優越感も感じておらず、仲間と良好な関係を築き協力し合えます。
協力できることで学童期に必要な「勤勉」さを養い、その後の発達段階に進むことができるということでしたが、まさに、ここでくじけてしまったのが当時の私。
この本の通り、青年期に不登校を経験しました。
そして成人期。
今の私も夫も年齢的にも感覚的にもこの時期にあたりますが、この数年、私はまさに「自己の確立」で悩み通していました。
なんで私は大人になってから悩んでいるのだろう・・・と考えたりもしていましたが、この本に書かれている時期に悩んでいてちょっと安心しました。
メンタルが弱かったり、強い意見にのまれたり、そんな自分が嫌でしたが「自己の確立」がきちんとできていなかったからというのもあるのかもしれません。
壮年期の課題である「次の世代への関心」は、まだ足りないとはいえ、子どもの存在により少し前進させてもらっているなという感覚です。
老年期は3回くらい読み返したけどどうにもピンときませんでした。
「子どもの心はどう育つのか」乳児期から老年期までの心の発達を学べる本/まとめ
この本を読んで、子どもだけでなく自分の心もまだ発達途中ということに気づかされましたし、来る「壮年期」の次の世代への関心は明らかに強くなりました。
「社会とのつながりや日々出会う人達との関係性をどう考えて接していただろうか。」
と振り返りました。
そして外に出ると、変かもしれないですが、すれ違う人や出会う人みんなが同じ社会の一員で仲間のように感じられました。
実は、著者の佐々木正美さんが書かれた「子どもの心の育てかた」という本についても以前記事を書いていました。
内容が重なる部分がありますが、どちらも読むことでより理解が深まりました。
今回紹介した本はこちら。